『花束の先』
彼女のことが好きなんだ。
君はまだ気づいていないかもしれないが、ぼくはささやかな、それでいて華やかな彼女の姿を知っている。
それは、黒板を見つめる瞳。
それは、友人と戯れる指先。
それは、居眠りする横顔。
それは、彼女のいる世界。
いつどこに居たとしても、彼女のことを考えるだけで幸せが訪れるんだ。
だけど同時に、
彼女は痛みをも連れてくる。
彼女の瞳にぼくはいないという事実とともに。
幾つもの帰り道を経ても変わらない世界に、
お気に入りのナンバーの数だけアクセルを踏み、
立ち向かう準備をしてきた。
今日が決戦の日だ。
下馬評は最悪かもしれない。
だけどこの世界の終末になにが待っているかは誰にも分からない。
だからぼくは、
嬉しさだけが待ってるんじゃないかと、
少しだけ期待しているんだ。
花束を携えて、
彼女の瞳が見出す未来を知るために、
彼はもう一度お気に入りのナンバーを聴いた。
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参考
『Bulemin' Days』 Yogee New Wavesさん